April 2001アーカイブ

何故、ドットコムバブルは崩壊したのか?

 2000年4月14日、NASDAQは開設以来最大の下げ幅1153.91ポイントを記録した。その後、細かい動きを繰り返して続落し、現在では最高時の4割の水準にまで下がっている。世に言うドットコムバブルの崩壊である。我が世の春を謳歌したウォール街は勿論、シリコンバレー、ビットバレーでもレイオフの嵐が吹き荒れ、往時の精彩は見られなくなってしまった。

 当初ドットコムをめぐる環境は、中核技術や収益モデル等のビジネスコアが不安定で、誰が勝組になるかわからないカオスだった。混沌は幻想を生む。いや、幻想を仕掛け易かったと言うべきか。金融界の錬金術師、投資銀行や金融アナリスト達は「絶対に損しない銘柄」と、ドットコムなら何でも推奨し投資家を焚きつけた。ネットは普遍的な商取引の根幹となり既存チャネルを代替する、ネットにより販路は無限に広がり新規商圏を拡大できる、企業は自社競争力向上のために合理化IT投資を行いつづける、という一見もっともらしい3つの幻想が、多くの人々の理性を狂わせたのである。日本のバブルが崩れ、欧州市場の改革が遅々として進まず、アジアの成長が行き詰まっていた状況下で、ドットコム市場は資金の流入先として格好のターゲットとなった。殊に、デイトレーダーを中心とする個人投資家は、スーパー401条による年金システム変更もあり、このカオスにはまり込んでいったのである。もはや市場は、正常な産業の進化や企業の業績拡大から乖離し、膨張しつづける混沌の世界へと変容していた。

 2000年に入り、あらかたビジネスモデルが出揃い産業としての構造が見え始めると、この詭弁に満ちたドットコムバブルに不安を持つ人々が現れ始めた。その不安が明確に現実化したのが、amazon.comとyahoo!の予想外の業績不振である。幻想は砕かれ、投資家は我先にとドットコム企業から手を引き大暴落が始まった。バーンレートがドットコムを図る指標となり、新規の投資が冷え込むことで産業の拡大も終わりを告げたのである。
 そのドタバタの影でバブル崩壊は、ドットコムに厳しい競争力強化と価値創出を迫ることになり、ビジネスモデルの精度を高め強さを増すことにつながった。焼け野原に残った数少ない草々は、強く太く育って大輪の花を咲かせようとしている。米国がドットコムバブルの崩壊という試練を通じて、次世代へと続く強い産業の核を手に入れたのは、歴史の必然だったのかもしれない。


ドットコムバブルの崩壊が、日本に与える影響とは?

 米国ドットコムバブルの崩壊は、多くの日本企業・日本人にとって、あくまで対岸の火事に留まった。土地バブルの崩壊で懲りていた日本企業は、投資先として深く足を突っ込んでいた訳ではなく、また産業としての連関性もそれほど高くなかったために、さほど火傷をしなかったのである。
ただ、この崩壊がわが国のビジネス界に与えたショックは大きかった。情報ハイウェイ構想以来、世界のITをリードし、ITをベースとした多くのビジネスを新たに生み出しつづけていた米国の躓きは、米国をお手本として走って来た日本にとって大きなショックだったのである。ショックは、そのまま日本におけるITベンチャーへの疑念という形で表出してきている。「米国でうまくいかないものが、日本でうまくいくわけがない。」という暗黙の了解を背景に、その可能性やビジネス展開に必要以上の疑念が向けられ、日本のITベンチャーに対する投資は、本質的な評価とは関係なく、差し控えられ冷え込んでしまっている。

 元来ITは、日本の社会変化や制度改革、市場の成長に本質的なドライビングフォースとなり、低迷する景気をも変化させる力を持っていた。それが、ドットコムバブル崩壊に起因する懐疑的風潮によって、押さえ込まれたのである。さらにまずいことに、日本発ITベンチャー離陸のもたつきは、厳しい環境で生残った米国ドットコム(あるいはそのビジネスコア)の、日本市場への敷衍と席捲を許す隙を作ってしまった。ERP/eMP/CRM/SFA...3文字アルファベットの連呼に象徴されるように、主要なIT領域において、米国ドットコムとそのモデルがデファクトスタンダード化してしまった。
 つまり、表層的には日本産業に大きな影響を与えていないドットコムバブル崩壊は、より本質的な意味で、日本独自のスキームによる"e"による改革を阻み、中長期的な禍根を残すこととなっているのである。ただでさえ起業家精神に乏しくITリテラシーが低い等、eへの転換が困難と言われる日本において、今こそ、米国ドットコムバブル崩壊に学びそれ乗り越えて、新たな挑戦による巻き返しを図る時ではないだろうか?

Twitter アップデート


このアーカイブについて

このページには、April 2001に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

次のアーカイブはMai 2004です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。