TVやラジオの業態は、よくホテルに例えられる。
1日は24時間、しかもCMの総量規制もかかっているから、ホテルの部屋数が限られているように、売れてるからって商品は増えていかない。夏休みやお正月に予約が殺到して部屋代が高騰して、それでも部屋が取れないことがあるように、人気のある番組や時間帯には、多くのクライアントが群がっていて、大枚積んでもワクを抑えることは難しかった。
つまり、かなり一方的な売り手市場。
TV局や代理店は高収益の背景には、この市場の特殊性があった。
ところが、今回の"Great Recession"は、そんな特殊性に支えられた市場構造を大きく変えた。多くのクライアントが高コストのマスメディアからネットへと出向をシフトさせ、きっちりとした検証のないバンドワゴン現象も手伝って、マスメディアというホテルを訪れるヒトは、急激に減少してしまったのである。
こうなると、ホテル・マスメディアの経営は大変なことになってくる。
空室のままではホテルを回すことはできないから、人気のない部屋や閑散期には事実上のディスカウントもやらなきゃならないし、これまで求められたこともないアカウンタビリティも問われてくる。もともと高収益の事業に浸っていた訳だから、いきなり体質改善と言われてもやりようがない。コンサル会社になけなしの数億円を払った結果、かえって収益性を悪化させ、青息吐息になってしまった。
そして、昨年後半ぐらいから、さらに状況は悪化しつつある。
収益向上のためにうった編成・制作予算の制限は、コンテンツの陳腐化/同質化を招き、YouTubeやDSのエンタテイメントとしての充実もあいまって、経営上の根幹資産である視聴率の低減傾向を呼んでしまった。つまり経営改革に走るあまり大切な売り物の客室のメンテが追いつかなくなり、窓からの景色も悪くなって、ちっとも魅力的じゃなくなっているということ。これでは、景気が回復して客足が戻っても、泊まりたい部屋がない。せっかくホテルに泊まる気になっても、部屋を見るなり帰りたくなってしまう。気付かぬうちに、TV局の経営は自らの一番大切な競争力を手放してしまっていた。
じゃ、どうしたら良いのか?
日本より一歩早く景況が悪化していた米国のTV局では、ソープドラマや中途半端なバラエティか制作費を絞り込めるリアリティテレビにシフトし、さらにまとまった資金を、マルチウィンドウでの収益確保が狙える"24"や"CSI"のような大型コンテンツの制作に回している。つまり魅力的なコンテンツプロバイダーとしての本分に立ち戻ること。近視眼的な視聴率競争に陥るのではなく、タレントによって話題化を狙うのではなく、世界水準のエンタテイメントコンテンツの提供を目指すべきなんじゃないだろうか?
早く、日本にもBruckheimerが現れてくれないかなあ。