November 2016アーカイブ

先日、ある大企業の若手有望株とお話しする機会があった。

この企業、業界に変革をもたらすことで成功し、長期間にわたって高い収益性を誇って来た企業なのだけれど、昨今の早すぎる環境変化の中で、基幹事業がベンチャーに蚕食されて収益性が悪化し、いつしかノルマ至上主義となって組織風土が劣化してしまった、典型的な大企業病に陥っていた。

で、当然のように、バリュチェーンの再構成と、その前提としてのカンパニー制への移行、提供価値の再整理と強化策の検討、若手への権限移譲による組織のアジャイル化、なんてメニューを提案したんだけど… 初手の「バリューチェーンの再構成」「カンパニー制への移行」のところでつまづいた。

「たくさん人がいるからこそ、できることがあると思うんです。」


うーん、でもさ、それを追求してここまで来て、ニッチもサッチも行かなくなりつつあるんじゃないかな。もちろん、彼(彼女)が悪いわけじゃない。大企業であることを、ほぼ妄信的に是として、イノベーションへのモチベートを行ってこなかった、マネジメント層にこそ問題があるのだと思う。

一人ひとりの、イノベーションへのモチベートを継続していくこと。否応なく変革を求められる時代だからこそ、組織をイノベーションへと鼓舞し、リードしていくことが、経営には強う求められているのだと思う。



ふと思いついて、「標準化」「提言」「政府」と検索窓に入れてみた。結果は約144,000件。どうも、政府というところは、標準化という言葉が好きらしい。

とはいえ、学生の時に習ったように、エントロピーは必ず拡大する。いくら体系的に整理して、インセンティブを繰り出して従わせようとしても、多くの自発的な創意工夫の結果、標準に収まらない新たな事象やデータが溢れ出してくる。そして、新たな標準が必要になって、さらなる標準化の連鎖が続いていく。

有史以来、鍋1つ標準化できない我々には、どだい標準化なんて不可能かもしれない。

ただ、それでも急速に進むIoT 、データエクスチェンジの時代に(標準化の本来の目的である)互換性の維持が必要なのであれば、いっそのこと、データ互換性を支えるAIを本気で開発したらどうだろう。どんなデータベースでも、どんなデータフォーマットでも、もちろん画像でも動画でも、適切な標準化を行なって互換性を実現できるAI。

チャレンジしてみる価値はある、気がする。

課題先進国である我が国においては、シェアリングエコノミーやPDS等のデータ活用サービスとも言える分野で、多くの事業開発と、それを通じた社会課題の解決と産業の活性化が期待されている。

しかしながら、多くの実証事業や、ベンチャー企業による取組みにも見られるように、例え、先端的な技術や先駆的なビジネスアイデアであったとしても、あるいは欧米で成功しているビジネスだったとしても、実際に我が国で社会的認知を得て、事業として独り立ちするまでに至らないケースが多いように思う。

いうまでもなく、事業は生み出すのも困難だが、育てるのはその何倍も難しい。では、事業を「育てる」、あるいは安定的収益を生み出すまでに「スケールさせる」には、一体、何が大切なのだろう。

今年に入って、60社を超える、いわゆる先進的データ活用企業のみなさんとディスカッションさせていただいて気づいたのは、「スケール」した事業には、提供しているサービスや商品に「スケールするDNA」が組み込まれているのではないか、ということ。元も子もないようだが、事業運営や展開戦略ではなく、むしろ商品やサービスの本性そのものが卓越していたと思われるのである。

では、「スケールするDNA」とは何か?

それは、それぞれの事業の提供価値や体験の素晴らしさや、バリューチェーンの効率性、ましてや先進性なんていう送り手側の要素ではないらしい。もっとターゲットにとって潜在的でドロドロした、例えばB2Cで言えば消費者の「自分だけは失敗したくない」といった感情や、B2Bの事業であれば「競合から遅れていると思われたくない」といった、本性に近いところの見えない猜疑心に、ちゃんと食い込めるかにあるらしい。

例えば、100万アカウントで成長が止まった、AIを用いて個人のニーズに合わせてカスタマイズニュースを配信するサービスは、「今話題になっているニュースはこれ!」というカスタマイズとは真逆の配信ポリシーに切り替えることで、話題に遅れるのを恐れるユーザーを獲得し、あっという間に500万以上のアカウントに到達した。また、あるスマホ上の家計簿サービスは、単なる家計簿の機能を超え、自治体の給付金や医療費控除の提案機能を提示することで、日々のもらい忘れを恐れる幅広いコアユーザーを獲得した。

いずれも、当初の事業コンセプトを変更してでも、提供サービスに「スケールするDNA」をしっかり組み込んだ事例と言えるだろう。

そんな視点で、提案されている多くのデータ活用サービスを見つめ直してみると、「スケールするDNA」が埋め込まれている事業はまだまだほんの一握りだと思う。
一例をあげれば自分の運転状況に応じて自動車損害保険の保険料が安くなるテレマティクス保険は、間違いなくDNAが埋め込まれているし、一方で、これからの発展が期待されるPHR(Personal Health Record)サービスをスケールさせるには、医療費控除や保険料の減免といった、損したくない気持ちに応える仕掛けが不可欠だろう。

データ活用サービスの本格的展開はまだまだこれから。「スケールするDNA」のあり方も、これからますます増えてくるだろう。しっかりと研究しながら、自分なりに提案できるよう考えてみたい。


果断であること。と、無鉄砲であること。
機を見極めること。と、無策であること。

それぞれを分けているのは、結局は、時間を圧縮して考えられる力と、幅広い見識なのだと思う。

いずれも、新しい人たちとの「出会い」と「無駄話」で生み出されること。椅子の上に座って、いつものメンバーと会議いているだけのリーダーは、もういらないのかもしれない。



先日の新聞記事で、日本の郵便システムのロシアへの輸出が話題になった。

郵便を支える機械やソフトウェアだけではなく、配達までを含めた全体の仕組みや、継続的運営を可能とする細かいノウハウ、これらを実装するための講師とプログラム、それら全体を提供する典型的な「インフラ輸出」である。

平均的遅延が1分以下と言われる新幹線に代表されるように、我が国の社会の強みは、個々の機械やソフトウェアというよりは、運営ノウハウや、業務関連教育等、それらをすべて統合した全体的なスキームの精度の高さと安定性にある。中国等の諸国が単体製品の品質とUXまで含めた魅力で競争力を高めつつある中、我が国の輸出のあり方が、インフラ輸出に移行していくのは必然なのだろう。

ここで、ひとつの論点が惹起される。「今、自らが展開している事業をめぐるエコシステムは、「インフラ輸出」として世界に輸出できるほどに、十分な競争力を有しているだろうか?」

実際に輸出するかしないかは別として、輸出に耐えられるほどに精度高く、安定していて、何よりもエコスステムとして魅力的なものでなければ、多くの業界でバリューチェインの再編が進む中、筋肉質でアジャイルな新たなイノベーター企業、あるいは水平統合型の企業に凌駕されてしまうだろう。

我が国の輸出がインフラ輸出型へと展開していく今は、事業者にとっては、自らのエコシステムの競争力を見つめ直す格好のチャンスと言える。


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